人間の感性には大局して2つの傾向があるといいます。物事と物事の間に「違い」を見つける能力と、「共通性」を見出す能力です。そして世界に親しみを感じるとき、私たちは共通性を見出す能力を働かせています。

(以下の内容はネタバレを含みます)

ぼくは夏になるとよく海に行きます。泳ぎながら魚を見るのが楽しみです。いつも一人で行くのですが、ある日、妻と行くことになりました。一緒に行くのは数年ぶりのことです。しかし海に着いても彼女は日焼けが嫌だと帽子も取らず、やっぱり水着は恥ずかしいからと海に入りません。ぼくは不満ながらも一緒に砂浜で貝殻を集めはじめました。すると綺麗な貝殻や丸くなったガラス片がたくさん集まります。ぼくにとっては新鮮な海の楽しみ方でした。最後には満足した気持ちになっていました。

そして家に帰り、用をたそうと洋式トイレの蓋をパカンと跳ね上げたときです! トイレと二枚貝は一緒だ! と思いました。見れば見るほど似ています。それまで知らなかった世界の秘密を垣間見たようで、不思議な幸福感が沸き起こりました。この絵本はそんな体験が元になっています。

子どもは生まれてからだんだんと「違い」をもとに学習を進めていきます。全てがひとつの世界から、色々に分別された世界に旅立っていくのです。だから分別された物事のなかに共通性を発見することは、ある意味で逆行であり、生の源の方面へ想いを馳せることなのです。

絵本が好きな方は体験的にご存知でしょう。絵本はそのような感性の宝庫です。独自の親しみをもって世界ひとつに繋ぐメディアです。「トイレさん」はそうした絵本の王道を自分たちにも教えてくれた一作です。